2022.02.10

道南鹿部町 昆布の旅

1お客様について

a couple

今回のお客様は、今年結婚5周年を迎えたRさんご夫婦

と、そのご両親でした。オアフ島在住にお住いのRさんは
日系4世の耳鼻科医、奥さんのBさんは中国系アメリカ人
で、日系医薬品メーカーに勤める医療コーディネーター。
彼女が事実上のツアーリーダーです。

 

お父さんは、山口県にルーツを持つ日系3世。高校卒業

後海軍に志願し、横須賀・佐世保を基地とする空母勤務。除隊後奨学金を得て大学進学。卒業後、州の森林管理局に永年勤続し、定年を迎えたそうです。今はハワイ島のヒロで、奥さんと悠々自適の生活を楽しんでおられます。
family

 

お父さんは農業が趣味で、タロイモ栽培は業者に出

荷するほどの腕前。その他さまざまな品目の作物を栽培しており、今回も行く先々でタネ物を購入しました。

若いご夫婦は、前年夏に北海道を初めて旅行しまし

たが、折から北海道を襲った台風の影響で行けなかったところもあり、今回はそのリベンジも兼ねて、親孝行のため再度の北海道観光に来られたそうです。
 
 
 

2旅程のハイライト

shikabe

今回のツアーは6月の10日間で、富良野・美

瑛・白老・登別・函館・洞爺湖・札幌などを巡りましたが、地元エージェントである北海道宝島旅行社さんが、腕によりをかけて企画したオーダーメイドツアーの最大のハイライトは、道南鹿部町での「昆布を深く知り親しむ旅」。

 果たしてお客様はそこで何を学び、どんなことを感じたのでしょうか?

 
3昆布について

umami

和食には欠かせない「だし」。「だし」は昆

布や鰹節、シイタケなど天然素材から採れる旨味成分で、今やUmamiという単語はオックスフォード英語辞典に収録されているほど。
「旨味三大要素」の一つである、グルタミン酸の源泉は昆布です。我が国の昆布の90%は北海道で生産されますが、道南鹿部町は最高級品質を誇る「真昆布」の名産地。

harvest

 

今回は、現地到着後漁船に乗って昆布養殖の現場まで

行き、昆布の生育状況をつぶさに見学しました。その後昆布漁師のAさんのお宅に伺い、ご家族総出で行う製品づくりの苦労話を聞きました。
on shore

お昼には、道の駅に併設する「浜のかあさん食堂」に戻り

ししゃもの昆布巻きづくりに挑戦。調理実習の後は、出来たばかりの昆布巻き、昆布サラダ、アブラコの昆布締め、ガゴメ昆布の味噌汁の他、カレイの煮付けなど、前浜の海の幸を使った、心尽くしのご馳走を楽しみました。

food


ハワイでも昆布は普通に使われているそうですが、今回は

「生育から調理まで」昆布のすべてを知ることができて大満足、とのことでした。

 

4お父さんの遠い記憶

birthplace1

 美味しい食事が終わった後、日本の古武士

  の風格を漂わせ、普段無駄口をあまり叩か
  ないお父さんが、「そういえば自分の大叔
  父さんが、昔エビの養殖事業に携わったと
  聞いた」とポツリ。早速ネットで調べたと
  ころ、お父さんの大叔父さんである「藤永
  元作」という人物が、第2次世界大戦直後
  に、我が国最初の『車エビ養殖技術』を確
  立し、その後の養殖漁業興隆の草分けでと
  なったことが分かりました。漁業種類は異
  なっても、大叔父さんが培った「養殖魂」

が、ここ鹿部町の昆布養殖に受け継がれていることを知り、鹿部町とお客様の奇しき縁に、一同感動を新たにしました。

 

5サプライズ・プレゼント

ガイドは、お客様を喜ばせたいと考え、いつも何かネタがないか感覚を研ぎ澄ましてい

ます。今回ネットで調べて、大叔父さんが元農林省水産庁調査研究部長だったことを突き止めましたが、その際この方の伝記が出版されていたことを知りました。もしこれを入手できれば、お客様への良いプレゼントになると考えましたが、1992年に出版されたその本は、既に絶版となりどこにも売っていません。そこでパっと閃いて、ネットオークションをチェックしたところ、何とたった1冊だけ「えびに夢を賭けた男―藤永元作伝」が出品されていたのです。

よくもまあこのような珍しい本が、見つかったものです!早速落札し、一件落着。あと

はこの本が、お客様の北海道滞在中に入手できるかどうか、です。もし間に合わなければ、ご自宅まで郵送することにしました。

book

旅程の最終日、札幌市内のスープカレー屋

さんで昼食中、家内から「たった今本が届いた」との連絡があり、大至急届けてくれるよう依頼。何とか時間に間に合って、この本をプレゼントすることができました。お父さんは本の中に自分の父親の写真を見つけ、とても感慨深げでした。

Rさんから届いた後日談では、お父さんは

この本を、家に訪れる人々の誰かれなく誇らしげに披露している、とのこと。
旅の良い思い出作りをモットーとする、ガイド冥利に尽きます。

 

6ガイド宅への立ち寄り

   お父さんが農業好きなことは既に書きましたが、実は私の家内も同好の士です。

vege1

「趣味が高じて、素人の域を脱しつつある」と旅のつれづれに話したところ、お父さんから「奥さんの家庭菜園を是非見たい」とのリクエストがあり、拙宅にお連れしました。
そこで、畑耕作の当事者である私の家内に会い、意気投合。家庭菜園、花壇を案内した後、家の中でコーヒーを飲みながらしばし歓談。家内からの贈り物(ナス、キュウリ、ゴーヤなどのタネ)を、殊の外喜んでくれました。
 
 

お客様の喜ぶ顔と、「ありがとう!」の言葉が、私たちツアーガイドの活力の源です。

このツアーを終えてその経過を改めて振り返り、自分として満ち足りた気持ちを噛みしめたことでした。

 

椎谷 泰世 記