国内外を問わず北海道に観光に来られるお客様は「食」を楽しみにしていらっしゃる方が多いと思います。ですが、インバウンドであれば特に、ムスリム、ベジタリアン等、食材や調理方法に注意が必要なお客様が安心して利用できる、また、対応が「可」である飲食店は、まだまだ少ない印象です。
そこで、NG食材はあるものの、日本の食べ物にご興味のあるお客様が、ツアー行程表の食事以外にお菓子や夜食等を買いに行ったり、ガイド同行なしのフリーの日にご自分たちでお食事をなさったりする時に少しでも役立つことがあれば……と思い、日本語話者にヘルプをお願いできる「●●が食べられません/飲めません」カード作成し、必要な方にお渡しするようにしています。
ご自身の信仰・信条に基づく(食)生活をなさっている方でも、旅先の北海道・日本で初めて目にした料理の写真やポスター、食品サンプルはいかにも美味しそう、なのでNG食材さえなければ食べてみたいと思うのも然りです。また、日本のアニメ・マンガに親しまれてきたお客様層には特に、登場人物がおいしそうに食べている物を、いつか日本に行く機会があれば是非トライしたいと思っていた、とおっしゃる方もいらっしゃいます。(例:焼きそばパン、鯛焼き、スパゲティ・ナポリタン)
昨今は翻訳ソフトの精度が以前より格段に上がり、スマホを食品の表示レベルにかざせばその翻訳内容をある程度理解できますが、本当に大丈夫かを再度確認したい場合があると思います。その時に、どうしようか迷っている食品/商品をそのカードと一緒にレジ係/ホール係、あるいは近くにいる親切そうな(ここ、ポイントです!(笑))日本人に見せて、少しだけ助けてもらうというシチュエーションを想定しました。
具体的には、カードの片面(A)には
①「食べられないもの」:例えば「豚肉や豚の素材のもの(ソーセージ、ラード、豚皮等を含む)とアルコールがダメです。」「トリ肉と卵はOK、それ以外の肉と加工品は全てダメです。」「エビ、カニなどの甲殻類がダメです」等、そのお客様にとってのNG食材(事前の聞き取り・カード作りが難しければ、手書きで記入できるタイプのカードを準備)
②指差しで示してもらうための「入っています」「入っていません」
その裏面(B)には、レストラン等の飲食店利用時の想定で、写真つきメニューや店頭のお料理サンプル等を指さし、A面のNG食材を抜いて調理してもらえるかを訊ねる内容と、その答え「OK,です」「We’re sorry (すみません、お受けできません)」
目につきやすい色紙で、お財布やバッグに入れて持ち歩き出し入れできる作りであれば(例:名刺サイズ、両面印刷、二つ折り、パッと読める文字サイズも重要)、スマホ入力による翻訳より簡単と思われます。また、ご本人の安心のために簡単な英単語・フレーズも併記します。
これまでにいろんな方にこのカードをお渡ししてきました。果たして、このカードが使われたのか、使われたとすればどのような状況だったか等は正確に把握できていませんが、自発的に「助かったよ!」とフィードバックを下さった方がこれまでに何人もいらっしゃいました。
北海道に限らず日本の一般的な「食」事情が、お客様の信条や志向に基づく食の志向に必ずしも応えられないことを知った上での全くささやかなアクションですが、そのカードに込められたこちらの配慮を理解し受け取って下さったお客様が「ありがとう」と感謝の言葉を口にして下さると、こちらも「作ってよかった…。」とつくづく思うのでした。
実態調査は今後の課題とし、これからも必要に応じて改良を加えて行ければと思っています。