2020.04.06

旅作りはエージェントとの連係プレイ

2月のスキースキーシーズンは北海道には素晴らしい雪を求めて世界中から人が集まる。今回はニセコの前後に一日づつの2日間の仕事。一日目は洞爺湖周辺、その後数日間お客様はニセコでスキーを楽しみ、その後 札幌での一日ツアーを担当する。
第一日目のツアーは洞爺湖発で、車で約1時間の伊達で刀鍛冶工房を訪問し、洞爺湖に戻りミシュラン星付きの高級鉄板焼き店でのランチ、午後は洞爺湖畔のホテルでの温泉入浴体験、夕方にはニセコのホテルに送り、業務終了という予定だ。

東京のエージェントさんはツアーの前にお客様の様子をたくさん教えてくれる。

「お客様はアメリカ人の40代と50代男性が二人。ネットでの直接申し込み。申し込み者の40代の方は、すでに東京、大阪、京都方面は訪問していて今回は3回目の日本。お連れの方は日本が初めてで、その方に日本文化を体験させたいという強い希望。良いホテルとスキーとグルメと日本文化体験という希望に沿ってツアーを作った。申込者はニューヨークのビジネスマンのようで自分と電話中にもひっきりなしに電話があった。落ち着いた話し方で教養のある英語。二人はカップルではないがどんな関係なのかは不明」という。

これだけ情報があっても実際に会ってみなければわからない。

洞爺湖のホテルでお会いして行程を話すと、「ランチの予約はエージェントに頼んで解約した。地元の人が行く普通のレストランが良い。」ミシュランの☆は好きではないとの事。伊達に着くまでの車内では質問攻め。二人は従兄でニューヨークとロンドンに在住。自然な、地元の本物に触れたいと何度も言う。

伊達の刀鍛冶工房では、刀鍛冶が原料の砂鉄や原鉱を見せて説明してくれ、様々な鍛錬の過程の刃先も触る事が出来、実際に刀を打つ体験もして、本物の体験が出来たと大満足。さて、お昼は、蕎麦屋や回転すし?迷った挙句、地元で人気の回転すしのランチ。

ここで、私のガイドの“勘ピューター”が警報を出す。
午後に予定の温泉は洞爺湖には面しているが、無機質なコンクリート建てのホテル屋上にあるタイル張りの普通の温泉。この方達の描く日本の温泉のイメージではないだろう。東京のエージェントさんはお客様が喜んでくれるように行程の変更はして構わないと言う。せっかくなら山中に湧く源泉のそばの雪秩父温泉の自然な露天風呂を体験してもらいたいと思い、顔なじみのドライバーさんからオーケーをもらい、時間超過と追加料金は発生しない事を確認した。
お客様に理由を告げて行程変更の承諾をもらい、ニセコでちょっと回り道。山道を登って強い硫黄の匂いの大湯沼の源泉に到着。「ほらここで温泉が生まれて、隣の建物の温泉の浴槽に溢れ出している。生まれたての本物のお湯。」

道中、車中の会話で旅の目的を聞く。ロンドン在住の彼は離婚したばかりで、仕事もやめた。かかりつけの精神分析医がガンになってしまい彼が相談できる場所も失った。彼が癒されて明るい前向きな気持ちになるために二人で日本に来たという。

お客様は1時間以上もゆっくりお湯に浸かって、ピカピカのほっぺになって本当に晴れ晴れとした湯上りの顔で上がってきた。別人かと思う程で、もうすでに癒しが始まって元気になってきている。「素晴らしい温泉だった。期待以上だった。」と言われるだけで、ドライバーさんに感謝で、ガイドとしてはとてもうれしい。

この一日でしっかり信頼してもらい、ぼくたちの好みがわかってもらえるから細かい所はお任せと、札幌ツアーはとても自然にうまくいった。最初にエージェントさんがしっかり好みを聞いてツアーを作ってくれた事。それでも、くみ取れない細かい希望を自由に現地ガイドがファインチューンするという連携がうまくいったのが、ツアーがスムーズだった要因だった。

お断り:蘭越町様のご厚意により、雪秩父の露天風呂の写真を使用させていただきました。((一社)蘭越町観光物産協会様HPより転載)