2020.04.03

急な車椅子利用への対応

夏の北海道をぐるっと回るツアーを担当した時のことです。お客様一団は東京に到着し、関東地方を数日観光した後に北海道へ来るという行程でした。関東では別のガイドさんが付き、私は北海道のパートを担当します。

北海道到着の2日前、エージェントさんから急に連絡が入りました。お客様のひとりが東京で転倒し、ひどい捻挫をしたため車椅子を利用しているので、北海道でも車椅子を借りられるところは借りて下さいとのことでした。それ以前にも、歩行が困難な方や車椅子利用の方をご案内したことはありましたが、普段から利用している歩行器や車椅子を持参して利用している方ばかりでしたので、今回のようにご旅行中にケガをされて、車椅子を借りなくてはいけないというのは、私にとって初めてのケースでした。

東は知床、南は函館まで、夏の北海道の主な観光地を7日間で回る盛り沢山なツアーで、毎日観光もたくさん、移動もたくさん。16名のツアー参加者とツアーリーダーは40代~50代中心で、体力のある方が多く、ハードな行程を元気に楽しむ姿が印象的でした。突然車椅子を使うことになってしまったお客様にも、なるべく同じように楽しんでいただくのがガイドの使命です。

車椅子利用についての一報を受けてすぐに、全ての立ち寄り先とホテルに連絡をし、貸出用車椅子の有無、貸出場所、バリアフリーの入口などを確認し、お座敷の食事場所は椅子席に変えてもらうなど思いつくかぎりの手配をしました。しかしツアーの中で、予定していなかった場所へ行くこともでてきますし、貸出用車椅子の台数に限りがあって予約もできない場所などもあり、お客様には笑顔を見せながらも心の中はハラハラの毎日でした。観光地ではお友達が車椅子を押していましたが、例えば道の駅でトイレ休憩をとる時などは、バス駐車場からガイドが走って車椅子を取りに行き、お客様をトイレに連れて行き、またバスへ連れて戻り、走って車椅子を返しに行き、という具合にいつも走り回っていました。

このようにいつもと違う条件でツアーをしていると、普段は気づかないことにも目が行くようになります。過去に何度も訪れた場所でも、違った印象を受けたりします。車椅子を借りたいということをお願いした際に、とても親切に対応してくれる施設が多いことに驚きました。目的の場所に車椅子がない場合でも、近隣の施設にお願いしたら快く貸してくれたケースもありました。また、いくつかの場所では施設のスタッフが駐車場まで車椅子を持って出迎えに来てくれたこともありました。

7日間の北海道観光を終え、お客様一団は函館から新幹線で東京へ発ちました。東京駅でも駅員がホームの降車口で車椅子を準備して待機してくれています。別れの際、全員が「とても楽しかった」と言ってくださいました。観光を楽しんでいただいたことに加え、各地で親身な対応をしていただいたことで、ツアー参加者の皆さまに北海道のあたたかさを十分に感じていただけたのではないかと思います。