2020.09.29

さっぽろ雪祭りは見られなかったけれど ……

天候がツアーのスケジュールを変更することは滅多にありませんが、私が2016年2月にフィリピンからのお客さんを迎える準備をしていた時にそれは起こりました。ツアーの出迎えのバナーに‘雪祭り5日間の旅’と書かれていたように、そのツアーの主な目的はさっぽろ雪まつりの見学です。雪祭りは大変人気があり、毎年、日本と世界中から約2百万人が訪れる一大イベントです。

 

新千歳

到着予定の日に、私は新千歳空港でお客さんのお迎えを準備して待っていましたが、いくら待っても現れません。フライトスケジュールはフィリピンのマニラを出発して東京の成田経由で新千歳空港に着くというものでした。しかし、お客さんが成田空港に着いた時には、冬将軍が北海道に吹雪を伴って来ていました。吹雪のため、新千歳空港への着陸は不能になり、お客さんは東京で足止めです。がっかりしていたところに、次の日も同じ理由で飛行機は東京を飛び立つことができず、結局、お客さんはスケジュールより2日遅れて新千歳空港に到着しました。
 
空港に降り立った時には、さっぽろ雪祭りは既に終わっていました。お客さんから、雪像だけでも見ることができないかという要望もありましたが、雪像は祭りの最終日に除去されています。過去には、雪像は祭りのあとも残っていましたが、祭りの後に雪像を見ていた少年が崩れた像の下敷きになり亡くなってから、像はすぐ壊され撤去されるようになりました。
 
日程も5日間から3日間になったため、全体のスケジュールも見直しながらのツアーとなりました。旅行代理店と打合せしながら、現地の観光協会などから情報を取り入れ、会場のスケールや前後の見学スケジュールを考慮して、支笏湖氷濤まつりをさっぽろ雪祭りの代わりに行くことにしました。また、遠い観光地は日程を短縮したため行けなくなったので、近郊の観光地を選びました。当然、初めの案と比べると規模が縮小されていますが、短かい日程の中では、お客さんを満足させることができるかなと思えるようになりました。

 
HyotoFestival

 

ツアー中は、ネガティブな発言は控えて、旅行を楽しめるように今回のツアーの良い所を見つけては皆さんを鼓舞するような事を言っていました。また、今回のことを皆さんに次のように伝えると、笑っていました。「飛行機が2回もキャンセルになることは非常に稀なことで、皆さんが生涯忘れることのない思い出になると思います。時が経つと記憶が浄化され、友達と微笑みながら、たまには大笑いしながら話し合える格好の話題になるでしょう。」また、さっぽろ雪まつりはインターネットでは見ることができるのですが、お土産にさっぽろ雪まつりの絵葉書を皆さんにわたしました。
 
ツアーも無事に済んだ出発の前日に旅行代理店から電話が来ました。帰りの飛行機がキャンセルになったということです。早朝のフライトしか運航していないので、キャンセル待ちにお客さんの名前を乗せたから、何とか、お客さんを乗せるように空港で航空会社と交渉してくれと伝えられ、電話は終了しました。お客さんに、明日帰るとすると、朝の4時に起きて空港に行くしか方法がないが、行っても乗れるかどうかは分からないことを伝え、長い間協議した結果、早朝にホテルを出て空港に向かうことで皆同意しました。
 
次の日、ホテルを5時30分に出て新千歳空港に着きましたが、予定していた7時50分のフライトはキャンセルになっていました。そのため、次の8時発の便にお客さんを乗せてもらえるように空港カンターで交渉しました。カウンターのスタッフからはキャンセル待ちになっているので順番で待ってください、乗れるかどうかは分かりませんということでしたが、今日、どうしても帰らなければならないことについて、考えられる色々な理由を説明してカンターに陣取っていると、とうとうスタッフもあきらめて8時のフライトに乗せていただけることになりました。

 

丘珠

お客さんを保安検査所のところまで送り届けてさようならを言った後に、ようやく一息つきました。飛行機が羽田に着くのを確認してから、旅行代理店に連絡して帰路に着きながら「終わりよければ全てよし」かな、と自分を慰めながら家に着き、ようやく、短くて長いツアーは終わりました。
 
何日か経ってから旅行代理店から電話があり、今回のツアーについてはお客さんが我々の対応に満足していると伝えられたのは、驚きで、また、本当に嬉しかったことです。
さっぽろ雪まつりは見せることはできなかったけれど、最悪の天候と日程の大幅な変更の中で、旅行代理店も私も出来るだけのことはしたのではないかと思っています。お客さんが私たちのホスピタリティを感じていただけれは、ツアーはある意味では成功だったのかもしれません。
 
今、私たちはコロナウィルスと共に生きています。部屋のソファーに座ってインターネットを通して観光地を見るバーチュアルツアーも可能です。しかし、一つだけバーチャルツアーで見ることのできないものがあるとしたら私たちのホスピタリティかもしれません。ツアーはただ単に観光地を眺めることだけではなく、我々も含めてその土地の人に触れ話を聞くことも含まれます。もし、本当のツアーを経験したかったら連絡ください。いつでも我々はお待ちしております。