2019.11.07

ツアーのお客様情報が来た。

50代の英国人のご夫婦。ラグビー観戦目的で日本に6週間滞在。行程表を見ると宿泊は高級ホテルばかり!どこでもガイドを付けている。でも車はつけていないから歩きたい方たちなのかもと、行程表を見ながら気持ちの準備が始まる。

東京、京都、大分、福岡、金沢、高山などを回ってから11月初めに北海道にやってくる。私に与えられたのは2日間。行程表では一日目は札幌で市内中心部を歩き、二条市場でランチをして午後はアサヒビールの工場見学と試飲、その後ホテルに戻りツアー終了。二日目は小樽を一日観光。
一万円の予算で交通機関やタクシーを利用し、それに加えて同額の入場料が予算についている。お客様の希望にできるだけ合わせてくださいと。エージェントさんからのランチ、訪問個所の予約は一切ない。
こういうツアーは天国みたい、フレキシブルで最高!好きだな~
お客様の好み、天気、体調などに合わせて自由に組み立てられるし、途中で様子を見て相談して、何度でも変更出来る。よし!この2日間で北海道に来てよかったと思えるようなツアーをしよう!

ツアーの前日にお客様に連絡を入れて、ツアー一日目の札幌の行程を伝える。すると、アサヒビール工場見学は希望しない。北海道博物館と開拓記念の村に行きたいとの希望。
うわぁ きっとエージェントさんもお客様と相談して行程を作りこんでいるのに、旅を続けるうちに気持ちが変わったのだろう。〝もちろん大丈夫ですよ。で、今まででよかったと思う場所はどこですか?“と聞くと、間髪を入れずに高山と京都祇園のナイトウオークという。
電話を切ってから一人作戦会議。
高山や祇園の雰囲気は北海道にはない。それならいっそ全く違う魅力を伝えよう。何がこの方達にとって魅力的に思えるだろう。専用車がないので行く場所は限られるし、外はすでに寒く、4時半には暗い。でもでも、悩んでもしょうがない。色々考えて準備だけ入念にしておけば、会ってみてからどうするか決められる。

博物館の開館日時に合わせて、一日目と2日目の行程をすっかり入れ替える了解をもらい天気予報、歩く予定の距離を前日に伝え、当日ホテルでミート。
“あっ 明るそうな 楽しそうな方達。長い距離も歩きたそう!”

瞬時に頭の中で、小樽駅で降りる予定を一つ手前の南小樽駅での下車に変更していた。楽しく歩く動線が頭に浮かぶ。移動の列車では地図を示し地域の特徴と今日の大まかな行程を話す。どうする?小樽でゆっくり見学してもいいし、午後から余市にも行けるよ?
イギリスでもジャパニーズウイスキーの評判を聞いてるので余市のニッカには興味大あり!っていう。じゃ 午後は余市だね。

さてと、南小樽駅で降りて昔の繊維問屋街を歩き、メルヘン交差点の近くのガラス工房を見学。港町小樽とガラス工芸の深い関係を話す。次いでオルゴール堂の2階から石造木骨建物内部を見ていただく。20世紀の初めに日本のこんなところにこんな建物があったなんて!
ね~~? ほら 下の店舗のあの台のオルゴール。、みんなお寿司のオルゴール。小樽はお寿司屋さんが100軒以上。小樽と言えば寿司!寿司オルゴールはザ・小樽!
近寄ってみると、
何??このエビのお寿司?ラグビー日本チームのユニフォームに似すぎている!!ゲラゲラ笑いながら、92歳の母の笑いが取れる最高のギフト!って即座に購入。
コーヒーが飲みたいとの事で、さてルタオ?北一のカフェ?札幌珈琲館?それともくぼ屋?キュルキュル自分の脳内検索機能の答えは、くぼ屋。この方達にはあの器であの店内で珈琲を飲んでいただきたい。なんとなく始まった話題はカズオ・イシグロ。作品のテーマの変遷と端正な文体からじわじわ伝わる不協和音が最後に本当のテーマに盛り上がるって、実は日本的な創作法なのか?って、めっちゃ私の好きなテーマじゃん!石黒を読んでるなんてすごい。オックスフォード卒のご夫妻は読みが深い。で、ミシマの割腹自殺は?と聞かれて “あのね 大きい声じゃ言えないけど、ひそひそ 彼は嫉妬したのよ。ほら仲良しのカワバタがノーベル賞もらっちゃって、何度も候補に上ってたミシマの受賞可能性が遠のいたからじゃん。二人はカワバタの受賞後絶交したけど、ミシマの気持ちは収まらなかったと思うよ。実はさ、その後カワバタも自殺したのよ”  うふふ 週刊誌レベルのゴシップ情報もガイドには必要なのよ~。笑 意外とこういう事だけお客様は覚えていたりする。

美術館では棟方志功や高山光雲の作品に感動されたのでゆっくり時間を取り、ランチは出抜小路で小樽ビールとチキンでピクニック。ゆっくり小樽運河をあるいて小樽の歴史と世界とのつながりを話す。途中で日本はなぜ太平洋戦争に突入したのかとの質問。当然疑問だよね。説明長くなるけどと断って、靖国神社の事から話を始めた。
小樽駅からは30分で余市に到着。駅からニッカは歩いて3分。タータン協会に認定された余市タータン、竹鶴夫妻の人生、有料試飲のPeaty and Saltyの味は余市の大ヒット。
第一日目はまあ成功かな。
翌日の札幌ツアーに備えてアイヌ画像、日本語を教えるためのプリント、流氷の仕組みの資料を自宅で作成。自宅からの通いガイドは楽だな~~