2020.07.09

丹頂鶴撮影ツァー

アメリカからのツァーグループを2月に釧路空港で出迎えた時は、写真撮影のグループですという情報しかなく、一体、どんなグループなのか全くわかっていませんでした。日程表を見ると実質2日間の滞在で丹頂鶴だけ撮影することになっていました。多くの写真撮影を目的としたグループが冬の道東を訪れます。被写体は主に野鳥です。釧路の丹頂を初めとして、道東にはオジロワシ、オオワシ、シマフクロウなど多くの野鳥が飛来します。撮影するお客の行動もまちまちです。あるグループは、プロの写真家のように、一つの被写体に集中して多くの時間を割きますが、他のグループは撮影と観光を両方楽しみたいとの意向を持っています。

今回空港でお迎えした15人のアメリカからのグループは、年は私と同じくらい高齢ですが、飛行機の預託荷物の重量制限一杯までもありそうな、カメラと機材で膨れあがったスーツケースを引きずって現れました。アリゾナ州のフォトショップのスタッフに引率された、極めてプロに近いグループのように見えました。

通常、日程が2日間あると、被写体は2種類以上の野鳥になりますが、このグループは丹頂鶴だけを撮影したいということで、多分、時間を持て余して他の被写体を撮りたいと言うのではないかと思い、事前に他の場所も調査しておきました。釧路市は海岸線に位置し、夏は霧に覆われますが、冬は晴れた日が多く、港からの夕日の美しさは外国の船員からも高く評価されています。また、魚も多くとれ、和商市場という人気のある魚市場もあります。

午前中に釧路空港に降り立って、私たちはすぐ鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリに向かいました。到着するまでのバスの中では鶴のことを多く説明します。他の地域では鶴は渡り鳥ですが、釧路では留鳥です。夏は釧路湿原に巣を設け虫や魚などのエサを捕食しますが、冬は湿原が凍るため、人間が給餌しなければ生存できません。そのため給仕場に集まり、写真撮影の格好の被写体になります。そのほか、鶴に関する情報をできるかぎりお伝えします。なんとか撮影のお役にたてばとの思いからです。農家が経営しているレストランで昼食をとりましたが、半数は昼食抜きで撮影に打ち込んでいました。

天候は穏やかで、晴天、曇り、降雪と変化し、背景のバリエーションを豊かにしてくれました。また、キタキツネが突然現れ、鶴の間を通り抜けるなど、貴重な撮影の時を与えてれくれました。半日以上、撮影をして飽きた様子もないのは驚きです。

次の日は、朝、和商市場に寄りました。市場を構成している60ぐらいの商店主は非常に友好的で、彼らのポートレートや販売している海産物を自由に撮らせてくれました。言葉の壁はあったもの、ジェスチャーや表情で十分意図は通じ、お客さんも楽しんでいました。次に訪れた阿寒国際ツルセンターで、晴天の下、丹頂鶴を1日中撮影した後、釧路の港に戻り、夕日を撮影しました。風が非常に強く、北海道弁でシバレル(非常に寒い)天候の中、幣御橋の上から多くの写真を撮っていました。

最終日は、帰国の日です。朝、皆さんがホテルのロビーに出発の準備で集まっていると、何人かは自慢のショットを「1000枚撮って1枚でも納得できるショットがあると幸せです」と言う言葉とともに見せてくれました。本当に皆さんがツァーに満足していただきたいというのがガイドの願いですし、今回はそうだったのでないかというのが私のひそかな喜びです。

自然を相手にした撮影ツァーでガイドが一つ考えなければならないのが、時間の管理です。北海道の冬は天候が良く変化します。吹雪が吹き荒れると野生動物は現れません。ひどい時は道路も閉鎖されます。あるお客さんは多くの被写体を希望します。そのため、ガイドは常に勉強し、写真家が興味ありそうな被写体を自分のポケットに多く用意する必要があります。また冬嵐で外出が不可能な時のために楽しめる施設も事前に把握する必要もあります。現地の最新の情報をもった北海道のガイドはお客さんを満足させるようにいつも準備しています。